認知症の方から学ぶ暮らし方・生き方
asuwaga.com〜老いてもひんぱいせんかってええんやでぇ
 
全国津々浦々からの受診箱
 
 


滋賀県立成人病センター 老年神経内科 松田先生と長濱先生より
アドバイスを頂きました。


松田先生
滋賀県立成人病センター 老年神経内科
京都大学大学院卒業・医学博士取得
滋賀県立成人病センター老年神経内科部長


「人間にとってもっとも辛く悲しいことは”貧困でも不治の病にかかることでもない”
それゆえに見放され、誰からも愛してもらえないことである」
;マザーテレサ

長濱先生
滋賀県立成人病センター 老年神経内科
京都大学大学院卒業・医学博士取得
滋賀県立成人病センター老年神経内科医長

    

●認知症の方ご本人からの質問
Q:忘れないように気をつけているが・・忘れているようだ。どうして今まで覚えられたことを忘れてしまうのですか?
Q:約束したことをすっかり忘れてしまいます。どうしたらいいですか?
Q:どうしてこんな病気になるのですか?
Q:こんな病気になるなんて怖いです。病気になったらどうしたらいいのですか?
Q:着替えや、歯磨きなど今まで普通にできていたことをしようとしてとまどい、どうしていいのかわからなくなります。どうしてですか?
Q:どんどん物忘れが進んだらどうなるのですか?
Q:この病気を治すことができるのですか?

●介護者・ご家族からの質問
Q:夫・妻・父・母・兄弟・・など家族の誰かが認知症では?と気付いたらどうすればいいですか?
Q:どういうことを、どのように忘れていくのですか?
Q:家族のことも忘れてしまうのですか?忘れず、残ることもあるのですか?
Q:認知症とわかったらどのように付き合っていけばいいのですか。
Q:家族としてどのように一緒に暮らしていけばいいのですか?
Q:早期の診断は、なぜ必要なのですか?
Q:診察を受けさせるにはどうしたらいいのですか?
Q:どうしたら、今までの生活を続けられるの?
Q:本人に認知症だということを教えたほうがいいでしょうか?
Q:認知症のある人が車の運転を続けていいですか?

●認知症に関する基本的な理解
Q:認知症って どんな病気ですか?
Q:どういう人が認知症になるのですか?
Q:認知症は遺伝するのですか?
Q:認知症には、病気の種類があるのですか?
Q:治る認知症と治せない認知症があるのですか?
Q:どのようにして認知症の診断をするのですか?
Q:アルツハイマー病ってどんな病気ですか?
Q:脳血管性認知症とは?
Q:レビー小体型認知症とは?
Q:前頭側頭葉型認知症とは?
Q:この病気は、どのように進行していくのですか?
Q:治療はできるのですか?どんな治療があるのですか?
Q:予防はできるのですか?
Q:認知症であっても将来の計画ができるでしょうか?

   

 
   
   


●認知症の方ご本人からの質問

Q:忘れないように気をつけているが・・忘れているようだ。どうして今まで覚えられたことを忘れてしまうのですか?


A:加齢だけでも「もの忘れ」は起こってきます。誰でも年を取ると、俳優などの有名人やよく知っているはずの人の名前を思い出しにくくなるものです。ですから、「もの忘れ」をあまり怖れすぎてもいけません。
  しかし、「病気のもの忘れ」は「加齢によるもの忘れ」とは異なり、自分の行動や出来事をすっかり忘れてしまうことが特徴です。こうした場合の「もの忘れ」は自分では気がつかないこともあります。
  「忘れているようだ」と言われるのは、家族から指摘されるからでしょうか。もし、あなたが親しい人や家族から「もの忘れが心配だから診てもらいましょう」と言われたら、思い切って「もの忘れ外来」を受診することをお勧めします。
  認知症の半数以上を占めるアルツハイマー病では、「もの忘れ」は必ず起こってきます。アルツハイマー病の人の脳では、記憶に重要な働きをする「海馬」と言う場所が障害されるため、日々の出来事が記憶しにくくなってくるのです。今まで簡単に覚えられていたことが、なかなか覚えられず、覚えたと思っても忘れてしまうので、随分と不安になられることでしょう。これは病気の症状であって、決してあなたが怠けているから覚えられないのではありません。
  あまり「忘れてはいけない」と思わず、「病気の症状だから仕方がない」と受け入れてください。むしろ、「忘れてもいいのだ」と割り切って、「もの忘れ」と上手く付き合ってください。もの忘れがあっても、普段の生活ではそんなに困らないことも多いのです。ただし、親しい人には「私は病気でもの忘れが強いので、助けてください」と打ち明けておくことをお勧めします。もの忘れを隠しておきたいという気持ちも分りますが、隠そうとするとよけいにつらくなります。たとえ「もの忘れ」をしていても、あなたの良いところはいつまでも残っているので、人間の価値が下がったなどと考えないことです。(松田先生より)


Q:
約束したことをすっかり忘れてしまいます。どうしたらいいですか?

   


A:
認知症のもの忘れでは、約束したという行動そのものを忘れてしまうことがあります。ですから、約束はできるだけしないほうがよいかもしれません。 約束をしても「忘れるかもしれない」ということを相手に伝えておく方がよいでしょう。
「メモ」を取ることを勧める人もいますが、どこに「メモ」があるのかを忘れたり、必要な時に「メモ」を見ることを忘れることも多いので、あまり役に立たないかもしれません。「メモ」を利用するのであれば、必ずひとつの帳面に書くようにして、いつもその帳面をみる習慣をつけることをお勧めします。あるいは、決まったカレンダーや予定表に、大事なことだけを書くようにするとよいでしょう。(松田先生より)


   
   
   
   


Q:
どうしてこんな病気になるのですか?

   
   


A:
認知症」というのは病気の名前ではなくて、症状の名前です。
だから「認知症」症状をおこす病気の種類によって原因は異なります。
ただ、アルツハイマー病のように、脳の細胞が徐々に減ってしまう病気(これを変性型認知症と言います)では、その原因はほとんど分っていません。
  世間ではいろいろな予防法がもてはやされていますが、確実なものはひとつもありません。原因が分らないから予防のしようがないのです。
だから、認知症になったとしても決してあなたの責任ではありません。
あなたが何かを怠っていたから認知症になったのではないのです。
認知症は恥ずかしい病気ではありません。
年をとると必ず一定の割合で認知症になる人がでてくるのです。
あなたと同じように悩んでいる人が大勢おられます。(松田先生より)

   
   
   
   


Q:
こんな病気になるなんて怖いです。病気になったらどうしたらいいのですか?

   
   


A:
どんな病気も怖いものですが、認知症は徐々に能力が低下していくことが自分でも分るので、不安になられるのも無理はありません。
しかし、病気を怖がりすぎてはいけません。まずはしっかりと診断を受けて医師のアドバイスを受けましょう。どういう種類の病気かによって治療法も対応も異なりますので、認知症専門の医師による診断とアドバイスを受けることをお勧めします。
  認知症になっても、何もかも失われてしまうわけではありません。
まだまだ残された能力があるはずです。大切なのは残された能力を活かして、日々の生活を楽しむことです。
家族や介護職の人のお世話にならないといけない場合もあるかもしれません。
他の人の助けを借りることを恥ずかしいと思わないで下さい。
みんなお互い様なのです。
  私の経験では、認知症の人は記憶などの認知能力は衰えてきますが、感情はむしろ豊かになっていく場合が多いように思います。
認知症になってこそ、感じられる「人の温かさ」や「自然の美しさ」があるのではないでしょうか。たとえ、ほとんど出来ることがなくなったとしても、あなたの良いところは必ず残ります。
あなたが幸せを感じて生きることで、周囲の人を幸せにすることも可能なのです。
家族はあなたが笑顔で生活することをきっと望んでいます。
  また、「認知症のケアをすることで、認知症の人からいろいろな大切なことを教えてもらえる」「認知症の人の笑顔が私の生きがいです」と言っている介護職の人も多いことを是非知っておいてください。(松田先生より)

   
   
   
   


Q:
着替えや、歯磨きなど今まで普通にできていたことをしようとしてとまどい、どうしていいのかわからなくなります。どうしてですか?

   
   

 
A:認知症で一番多い症状は記憶障害です。ただ、記憶と一口にいっても、いくつかの種類があります(図1)。記憶は大きく分けると手続き記憶と陳述記憶に分けられます。手続き記憶とは自転車の乗り方や泳ぎ方など身体で覚えた記憶です。
陳述記憶には意味記憶とエピソード記憶があります。
意味記憶とは言葉の意味や教科書で習った一般的知識のことをいいます。エピソード記憶とは日々の生活の記憶であり、「いつどこで〜した」という記憶です。認知症の代表であるアルツハイマー病で最も障害されるのはエピソード記憶です。意味記憶は意外と残りやすいのです。だから私の知っている大学の先生は専門的な知識はしっかり残っていて短い講義なら立派にされますが、次の講義の予定を忘れておられます。手続き記憶はアルツハイマー病でもよほど進行しない限り低下しません。「昔取った杵柄(きねづか)」でいろいろな芸ができる人がたくさんおられます。
 ただ、認知症では記憶障害以外にもいろいろな不自由が出てくる場合があります。
物事を段取りよく行うことができなくなる「実行機能障害」、麻痺はないのになぜかうまく動作ができなくなる「失行」、言葉が言えなくなったり理解しづらくなる「失語」、見えているのに物体の意味が分らなくなる「失認」などが主な症状です。
着替えが出来なくなるのは「着衣失行」と言って、衣服をうまく自分の身体に合わせられない症状です。簡単に着ることができる衣服にするほうがよいかもしれません。歯磨きが上手く出来なくなるのは、歯ブラシがうまく使えない「失行」の場合もありますし、歯磨きや歯ブラシという物品の意味がよく分らなくなる「失認」の場合もあります。また、歯磨きでは、チューブから歯磨き粉を適当量しぼり出して、歯ブラシの毛の部分にそれを付けてから、歯ブラシで歯をこするという、考えてみれば相当に複雑な作業をしているので、途中で段取りが分らなくなってしまうことも考えられます。
 いずれにせよ、まずは気持ちを落ち着かせることが大切です。
慌てると出来ることも出来なくなってしまう場合が少なくありません。
もし、人にせかされたら「私はゆっくりでないと出来ないのです」と堂々と言い返してください。それでも出来ない場合は、遠慮せず人の助けを借りましょう。
多少の手助けがあれば、全部を人にしてもらわなくても自分で出来ることも多いと思います。(松田先生より)

図1:記憶の種類


   
   
   
   


Q:
どんどん物忘れが進んだらどうなるのですか?

   
   


A:認知症が進行すればどうなるのかという質問だと思います。
もちろん、認知症の原因になっている病気の種類によって、いろいろな場合があるので一概には言えません。ただ、進行すればするほど、生活上での不自由が増えてくるのは事実です。生活で人の手助けを受けなければいけない場面が多くなり、最終的にはほとんど人の助けを借りて生活することになります。
 しかし、先ほどの質問でも述べたように、認知症が進行したら何もかも失われてしまうわけではありません。あなたが本来もっている「あなたらしさ」は必ず残ります。むしろ、本当のあなたの良いところだけが残って、健康な頃よりも「いい人」になる場合も多いように思います。
人はみな「知性の鎧」を着て生きていますが、この「鎧」を脱ぎ捨てた時に、本当の「人間らしさ」「その人らしさ」がでてくるのだと私は考えています。たとえ、最終的に家族の認識ができなくなるほどの重症になったとしても、周囲の人と暖かい心の交流をつづけることは可能なのです。(松田先生より)

   
   
   
   


Q:
この病気を治すことができるのですか?

   
   


A:残念ながら、この病気を治すことはできません。ただ、進行を遅らせる薬や症状を穏やかにする薬、気分を落ち着かせる薬などが有効な場合も多いので、きちんと専門医の診断を受けて、必要な薬は服用されたほうがよいでしょう。病気を治そうと思わないでください。
病気と上手く付き合おうと考えてください。
たとえ、認知症があっても、生活を楽しむことは十分に可能です。
そのためには、自分の病気のことを正しく知ってくれている人が周囲にいるほうがよいでしょう。
専門医に診てもらうことをお勧めするのは、自分で納得のいく診断を受けることだけでなく、周囲の人にあなたの病気を正しく知ってもらうことにも役立つからです。
 また、同じ病気を患っている人がたくさんいますので、そうした人と気後れせずに会話や交流ができる楽しい時間をもつことも大切です。
介護保険を使ってデイサービスやデイケアにも参加してみてください。あなたは今まで立派に世の中を支えてきた国民の一人なのですから、介護保険の恩恵を受ける権利があるはずです。
認知症の人が介護保険で受けられるサービスはいろいろありますから、ケアマネージャーと相談してください。介護スタッフの知識も増えて、一昔前に比べると格段に良質なサービスが受けられるようになっています。もちろん、まだまだ不十分なところも多いでしょう。
あなたの希望するケアやサービスをできるだけあなたの言葉で語ってください。それが認知症に携わる人の知識となり、今後に活かされるはずです。
まだ書くことが出来る人は、機会があれば自分の体験や気持ちを書いておいてください。
今後も認知症の人はますます増えていくでしょう。あなたはその人たちの先輩なのです。後に続く世代の人があなたの書いた文章を読んで励まされたり、慰められたりすることがあるかもしれません。
また、認知症の人の気持ちを社会に伝えることは、多くの人に認知症の真実の姿を正しく知ってもらうことに役立ちます。
そして、それが「認知症になっても安心して暮らせる社会」の形成にも大きな力となるでしょう。(松田先生より)

   
   
   
   


●介護者・ご家族からの質問

Q:夫・妻・父・母・兄弟・・など家族の誰かが認知症では?と気付いたらどうすればいいですか?

   
   


A:認知症は単なる年のせいではなく、何らかの病気が原因です。
多くの場合は進行性の病気ですが、中には早期に治療すれば回復する病気もあります。
  治療をするにせよ、ケアをするにせよ、まず原因をつきとめないと方針が立ちません。ですから「年をとったら認知症になっても仕方がない」と放置せず、医者を受診して、一度は頭部 CT などの検査を受け、診断を受けることをお勧めします。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:
どういうことを、どのように忘れていくのですか?

   
   


A:アルツハイマー病の場合、最初は人の名前や漢字が思い出せない、約束を忘れるなど、誰にでも心当たりがあるようなもの忘れから始まります。
そのうち、直前の出来事や人から聞いた話、自分が言ったことなどをすっかり忘れることが増えてきます。自分でも「よく忘れるな」という自覚はあるのですが、家族や友人など、周囲からみて「最近ずいぶん忘れっぽいな」と感じられるようになったら要注意です。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:
家族のことも忘れてしまうのですか?忘れず、残ることもあるのですか?

   
   


A:アルツハイマー病では、初期のうちは最近のことは忘れますが昔覚えたことは忘れず覚えています。病気が進行すると少しずつ昔の記憶も曖昧になってきて、高度認知症の時期ではご家族のこともわからなくなってきます。
しかし、人生のなかで培ってきた感性や感情など、“その人らしい”部分はかなり病気が進行しても保たれています。それに対して前頭側頭葉変性症では、記憶は結構良いのに、初期から性格が変化してきて“その人らしくなくなってくる”ことが特徴的です。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:
認知症とわかったらどのように付き合っていけばいいのですか。

   
   


A:あなたがご家族ではなく、職業として介護に関わっているか、隣人として付き合う場合の回答です。
 まず、認知症のことを学んでください。正しい知識を蓄えるほど、患者さんやご家族に対してふさわしい対応、良い支え方ができるようになるでしょう。
「知は力なり」です。人生経験だけでは認知症に対して正しい対応はできません。それを前提として、認知症の人と関わる上でいくつかポイントとなることを挙げてみます。
 認知症の方への対応は「パーソン・センタード( Person-Centered )」=「ひとりひとりの個性や症状を考慮して対応する」ことが大切です。認知症、中でもアルツハイマー病の方の気持ちは、能力の低下による戸惑いや焦りを感じる反面、こんなはずはない、自分はまだできるはず、と思う自尊心との狭間で揺れています。そんな気持ちをさらに傷つけることはできる限り避けなければなりません。

 【認知症の方への援助

「役割」のある生活: 洗濯物をたたむなど簡単な仕事でも、ペットや花の世話でかまいません。誰かの役に立っている、と感じることはプライドを保ち、生きがいを感じるために大切で、結果として精神の安定につながります。

せかさない: 認知症になると何をするにも時間がかかるようになります。逆にいえば、時間をかければできることがあります。本人のペースを尊重しましょう。

閉じ込めない: デイサービスなどを利用して人との交流を保つことは、心身の機能低下を防ぐために有効です。

共感的態度で接する: 自分を否定され続ければ誰でも他人に反発し信頼できなくなります。
信頼できない人の言うことは聞きません。頭から否定せず、患者さんが「わかってもらえた」と感じることで他者への信頼が回復します。

本人の納得を重視する: 説得されても、聞いた理屈を端から忘れてしまうので、大抵徒労に終わります。
理由はどうあれ、本人が納得する説明が有効です。

「取り繕い」を否定しない: アルツハイマー病の人は、自分のミスを認めずに言い訳をしたり人のせいにするようになります。
これは「取り繕い反応」といって病気の症状で、決して本人の性格が悪いわけではありません。否定せず、受け止めたり聞き流すことが大切です。

本人のプライドを尊重する: 認知症の人も、健康な人と同じようにプライドがあるのです。それを忘れないでください。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:
家族としてどのように一緒に暮らしていけばいいのですか?

   
   


A:家族の誰かが認知症になることは大変なことです。
ご家族は心の面でも、生活の面でも、認知症と向き合わなければなりません。
 まず心理面のお話をしましょう。大切な家族が「認知症」と診断されるとご家族は強いショックを受けます。
その後、「そんなはずはない」「間違いではないか」(とまどい、否認)と思う時期があり、それでも認知症症状が明らかになって否定できなくなると「どうしてこの人はこんなことをするのか!」「どうして私がこんな目にあうの?」と”怒り、悲しみ、拒絶”を感じ、一方では「病気になったのだから仕方ない」と”あきらめ”または”割り切り”を経て、現実の”受容”へと至ります。認知症では患者さんが困ったことを繰り返すたびに、ご家族は”とまどい”から”受容”の間の過程を行きつ戻りつします。これはご家族にとって大変大きな心理的ストレスになります。
 一方、生活面では現実的な問題に直面します。認知症の介護は非常に長期にわたります。そのため、介護のために家族がかかえる時間的制約、身体的負担、精神的負担、経済的負担はとても大きなものです。
特に日本は少子高齢社会で、家族の構成人数が少なく、また、高齢者夫婦だけの世帯や独居老人の世帯も増えていますので、介護者の負担は時に限界を超え、家庭内虐待や心中、介護殺人など悲しい結末を迎えることもあります。
心理的にも生活の上でも介護でご家族の生活を破綻させないために、ぜひ早い時期から介護・医療についてアドバイスを受けたり、介護サービスを利用していただいて、少しでも「がんばらない」介護を目指していただきたいと思います。
介護を人任せにすることを「患者さんにかわいそう」「世間体が悪い」と躊躇されるご家族も多いのですが、患者さんは決してご家族が健康を害したり生活が破綻することを望んでおられないはずです。
現在の介護保険や福祉の制度は決して十分とはいえませんが、それでもできるところは積極的に利用していただくことをお勧めします。
(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:
早期の診断は、なぜ必要なのですか?

   
   


A:認知症はいろいろな病気が原因になります。
中には早期発見すれば治せる病気もあります。また、アルツハイマー病など残念ながら進行していくことが避けられない病気であっても、早期から適切な治療を受け、適切な介護を受けることで、病気の悪化を最小限に抑えていくことが可能です。
ご家族にとっては、早期から病気に対してどう対応するのがよいかを知っていただくことで、ご家族の心身両面での介護負担が軽減されると思います。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:
診察を受けさせるにはどうしたらいいのですか?

   
   


A:受診を嫌がったり、「どうもない」と受診を拒否する方に診察を受けていただくのはなかなか難しいことがあります。それでも受診と言わずに「買い物に行こう」などと騙して病院へ連れて行くことはしてはいけません。
できれば「(家族からみて)忘れっぽいのが心配だから、一度診察を受けて欲しい」と話して受診につなげていただくのがいいと思います。ご家族が真剣に心配されていることが伝われば、一度くらいなら、と受診される方も多いです。それがだめなら「健康診断を受けて」と説得していただくのも OK です。どうしても病院へ受診することができない場合は、自宅へ往診してくださる開業医の先生に相談してみるのも一案でしょう。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:
どうしたら、今までの生活を続けられるの?

   
   


A:認知症の方を支えるうえでは、患者さんが自分でできることと、がんばってもできないことを見極めることが大事です。
  そして、障害された能力を元に戻そうと訓練するのではなく、できないところは周囲がサポートし、自分でできることはしていただくようにすることで、元通りとはいきませんが、今までの生活と連続した形で暮らし続けることが可能になります。
ご家族だけで上手にサポートすることは大変難しいので、ぜひ早期からケアの専門家に相談して、利用できる介護サービスについて検討していただくことをお勧めします。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:
本人に認知症だということを教えたほうがいいでしょうか?

   
   


A:認知症、特にアルツハイマー病を病名も含めて本人に告知するかどうかについては専門家の間でも統一された見解はありません。
ケース・バイ・ケースです、というのが正直な意見です。
時代の流れとしては、本人に告知を受け入れる状況が整っていれば、できる限り病名を含めて本人に告知をする方向に進んでいます。
しかし「アルツハイマー病である」と告知を受けることは(特に病気が軽くて理解力が保たれている場合)本人にとっては大変ショックなことです。「認知症だと本人が理解すれば、周囲の言うことを聞くだろう」との期待から、いわば思い知らせるように病気を教えることは避けるべきです。
本人に病気のことを告げるときには、周囲の人々(家族、病院スタッフ、ケアスタッフ)が患者さんを支える意思があることを同時に伝え、患者さんが独りで苦しむことがないように配慮することが大切です。
(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:
認知症のある人が車の運転を続けていいですか?

   
   


A:平成14年6月1日より道路交通法改正にて、「認知症」の疑いがあるとされる方、もしくは「認知症」と診断された方の運転免許は、当人もしくは家族等の申請により、適性検査の実施や診断書の提出を行い、取消し又は経過をみるために停止処分となることがある、と規定されています。
ですから公式な見解としては、認知症と診断された場合運転の可否は警察に届けた上で判断を受けるべき、となります。
しかし現実には車がないと生活に困る地域も多く、特に老夫婦世帯で夫が認知症だったりすると、夫の運転をやめさせたくても妻が「買い物にも行けない」と協力していただけないケースもあります。
自動車の運転は他人を巻き込む危険がある(認知症患者さんが道路を逆走する事故が相次いで報道されています)ので、ご家族も患者さんの状態に気を配っていただき、早めに対策を考える必要があるでしょう。(長濱先生より)

   
   
   
   


●認知症に関する基本的な理解

Q:認知症って どんな病気ですか?

   
   


A:「認知症」は症状や状態を表す言葉です。認知症状態をきたす病気にはいろいろあって、それは別項で詳しく述べられます。
「認知症」状態とは、いったん正常に発達した知的機能が徐々に低下して、生活に支障をきたすほどになった場合をいいます。
「せん妄」と呼ばれるような一時的な意識障害は認知症には含まれません。(松田先生より)

   
   
   
   


Q:
どういう人が認知症になるのですか?

   
   


A:「認知症になりやすい人」「なりにくい人」というのはありません。
認知症の代表疾患であるアルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症はすべて「神経難病」であって、予防法はないのです。
  ただ、年を取れば取るほど、認知症になる確率は高くなります。すべての人が長生きをすればするほど、認知症になる確率は高くなるのです。「この人は絶対に認知症にならない」ということなど、あり得ません。だから認知症の問題は、まさに「明日は我が身」の問題であって、決して他人事ではないのです。(松田先生より)

   
   
   
   


Q:
認知症は遺伝するのですか?

   
   


A:親が認知症であれば高い確率で子供も認知症になるという「遺伝性の認知症疾患」は存在しますが、ごくごく少数です。多くの認知症にははっきりとした遺伝性は認められません。
まだまだ分っていないことも多いので確実なことは言えませんが、「両親が脳卒中で亡くなったら、子供も脳卒中になりやすい」くらいの遺伝性は認められるかもしれないという程度です。
 80 歳以上の人の 4 人に1人が認知症になると言われています。
ご両親ともに 80 歳を超える人が多い中、親や親戚に認知症がない人の方が珍しいのではないでしょうか。ですから、あまり遺伝を気にするのは考えものです。男女ともに平均年齢が 80 歳を超えようとしている高齢社会ですから、「明日は我が身」の感覚で、「認知症になっても困らない社会」を作っていくことに力を合わせるほうが大切だと思います。(松田先生より)

   
   
   
   


Q:
認知症には、病気の種類があるのですか?

   
   


A:「認知症」をきたす病気には、詳しく言うと 100 以上の病気があります。ただ、頻度の高い認知症疾患は、その頻度順にアルツハイマー病、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭葉変性症の 4 つで、「 4 大認知症」とも呼ばれています。
それぞれに起こってくる症状も対応も異なります。
だからこそ、早期からきちんと専門医の診断を受けることが大切なのです。(松田先生より)

   
   
   
   


Q:
治る認知症と治せない認知症があるのですか?

   
   


A:認知症をきたす病気の中には、少数ながら適切な治療によって完全に治癒させたり、進行を止めることのできる「治る認知症」があります。代表的な「治る認知症」には、慢性硬膜下血腫と正常圧水頭症があります。慢性硬膜下血腫とは外傷などが原因で脳の表面に血液が溜まる病気で、溜まった血液で脳が圧迫されるために認知症状態を起こします。
また、脳の中には脳脊髄液という液体が脳室という脳の中の部屋から脳の表面に向かって流れています。何らかの原因でこの脳脊髄液の吸収が悪くなり、脳室が拡大する水頭症になって認知症状態を起こすことがあり、正常圧水頭症と呼ばれています。さらに、甲状腺ホルモンの異常やビタミン B 1、 B12 などの異常でも認知症と似た状態を起こすことがあります。これらの疾患は早期に適切な治療をすれば完全に治せることもあります。
しかし、治療が遅れると元に戻らないこともありますので、早期発見が重要です。(松田先生より)

   
   
   
   


Q:どのようにして認知症の診断をするのですか?

   
   


A:認知症の診断には、問診と診察、認知機能検査、画像検査が必要です。
問診では家族と本人の両方から、症状を聞く必要があります。
症状だけでなく、ご本人の教育歴や職業歴などの生活史、家族状況、現在の生活パターンを聴くことも、今後の治療やケアを考える上で重要です。
診察は一般内科的な診察と神経学的な所見を診るための神経学的診察があり、両方を一緒に診ていきます。通常、聴診器や反射をみるためのハンマーを用います。認知機能検査は、記憶や見当識、注意力、言語機能、空間的な認知機能などを測るための検査です。
長谷川式知能検査や MMSE といった検査が一般向きの本や TV などでも紹介されていますが、こうした検査は患者さんにとってあまり嬉しいものではありませんので、むやみに行ってはいけません。
修練を積んだ医師や臨床心理士が行うべきものです。
画像検査は脳の状態をみるものですが、脳の形をみるための CT や MRI 、脳の代謝や血流状態をみるための SPECT という検査が代表的です。
 滋賀県立成人病センター老年神経内科では、初診の日に、医師による問診と診察、臨床心理士による認知機能検査、および画像検査としての CT を行っています。血液検査や心電図、胸部レントゲンといった内科的スクリーニング検査もして帰っていただく場合が多いです。認知症といっても、身体の健康状態によって治療や対応が異なってくるからです。
また必要があれば MRI 、 SPECT 検査の予約を行います。
 半数以上の人は初診日だけで、ほぼ確実な診断を自信をもって下せますが、初期の場合の疾患診断には MRI や SPECT の予約検査、追加の認知機能検査が必要になり、それでも診断が下せない場合もあります。カンファレンスでも検討しますが、結論が出ずに経過観察しましょうという場合もあります。(松田先生より)

   
   
   
   


Q:アルツハイマー病ってどんな病気ですか?

   
   


A:アルツハイマー病は一次性認知症のなかで最も多い病気です。初期にはもの忘れだけの時期が数年続きます。その後徐々にもの忘れが強くなるとともに、日常生活の障害(買い物、掃除、料理、着替えなどの障害)が出現し、また物盗られ妄想、気分の不安定、時間や場所の見当が不確かになる、などがみられます。
他に、徘徊、失禁などがみられることもあります。さらに進行すると全ての日常生活に介護を必要とするようになります。病気の原因は、脳内にアミロイドβ蛋白が沈着してくるためではないかと考えられています(アミロイド仮説)。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:脳血管性認知症とは?

   
   


A:脳梗塞・脳出血などの脳血管障害に引き続いて生じる認知症で、 普通は発症時期が比較的はっきりしていることが多いとされています。しかし日本では多発性ラクナ梗塞による認知症や、大脳白質の慢性虚血による認知症(ビンスワンガー病)が多く、これらの病気では一見アルツハイマー病のように、記憶障害、見当識障害など認知症を思わせる症状だけが徐々に進行します。
高血圧症がある、小刻みな歩行になる、比較的早期から失禁が多い、などの特徴と、脳 MRI や脳血流 SPECT など画像診断を組み合わせることで診断できます。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:レビー小体型認知症とは?

   
   


A:
レビー小体型認知症は一次性認知症の中でアルツハイマー病に次いで多い病気です(一次性認知症の 15 〜 20 %)。
この病気はもの忘れもあり、一見アルツハイマー病に似ていますが、認知症が軽い時期からリアルな幻視がみえること(いない人がみえたり、動物がみえたりします)、調子の波が大きく、正常に思えるときと様子がおかしいときを繰返すこと、歩きにくい、動きが遅い、よく転倒するなどのパーキンソン症状がみられることが特徴です。
寝ているときの異常行動(寝言がひどい、寝ていて手足をバタバタしたりする)や、抑うつ症状を伴うこともあります。
アルファ・シヌクレインという蛋白の異常が発病に関係していると考えられています。この病気では抗精神病薬を始めとしていろいろな薬に感受性が高く、安易に薬を飲むと調子が悪くなることがあるので注意が必要です。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:前頭側頭葉型認知症とは?

   
   


A:前頭側頭葉変性症は一次性認知症の約 1 割を占め、アルツハイマー病に比べ発症が若い傾向があります。
初期にはもの忘れは目立たず、人格変化や行動異常が主な症状です。自己中心的、短絡的な行動や、意欲低下、だらしない行動がみられるため、精神科疾患のようにみえることもしばしばあります。
食事の好みの変化(甘いものや大量飲酒など)、繰り返し行動、言語障害(漢字が書けない、読めない)などもみられるようになります。
一言で表現すると「人の目を気にせず、自分勝手な行動をするようになる」病気です。
タウや TDP ‐ 43 という蛋白の異常が発病に関連するらしいことが最近わかってきました。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:この病気は、どのように進行していくのですか?

   
   


A:アルツハイマー病や前頭側頭葉変性症は、ゆっくりとですが進行することは避けられません。アルツハイマー病ではもの忘れが始まってから寝たきりになるまで、およそ 10 〜 15 年くらいです。
発症年齢が若いと進行が速い傾向があります。脳血管性認知症の場合、しばらく横ばいで経過して、脳血管障害が増えるごとに階段状に進行するのですが、実際には緩徐に進行してアルツハイマー病と紛らわしいことがあります。
レビー小体型認知症の進行速度は個人差が非常に大きく、認知症が発症してから数ヶ月で寝たきりになる場合もあれば、長期にわたって進行が目立たず安定する場合もあります。
経過の良し悪しは主にパーキンソン症状、つまり身体症状の進行速度によるところが大きいです。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:治療はできるのですか?どんな治療があるのですか?

   
   


A:認知症の治療には薬物療法と非薬物療法があります。薬物療法は、アルツハイマー病の進行を遅らせるための薬(塩酸ドネペジル)、気持ちを落ち着けたり幻覚・妄想を鎮めるための薬(抗うつ剤、抗精神病薬、漢方薬など)、レビー小体型認知症のパーキンソン症状を改善する薬などがあります。
病気や症状によって使い分けが必要です。非薬物療法では、患者さんに残された能力を生かして人との積極的な交流を保てる場を提供することで、病気の進行を遅らせたり症状を安定させる効果が期待されます。
回想法、作業療法(手工芸など)、芸術療法(音楽、絵画など)、動作法などが行われています。
デイケア、デイサービスも広い意味で非薬物療法に含まれます。
そして適切な介護(ケア)を受けると認知症症状は安定し、行動障害や精神症状が改善することがあります。介護(ケア)は重要な認知症治療のひとつです。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:予防はできるのですか?

   
   


A:病気の「予防」は 1 次予防(発症予防)、 2 次予防(早期発見、早期治療)、 3 次予防(症状の安定、再発の防止)に分けて考える必要があります。
認知症、特にアルツハイマー病などの一次性認知症は残念ながら発症を予防することはできません。
アルツハイマー病そのものは生活習慣病ではなく、根本原因が未だに不明な神経難病です。
アルツハイマー病の最大の危険因子は「歳をとること」ですので、ならない方法は歳をとらないことであって、これはナンセンスです。
50 年前の平均寿命は 65 歳くらい( 1955 年で男性 63.6 歳、女性 67.8 歳)でしたので認知症になる人は少数派でしたが、男女とも 80 歳まで生きることが普通( 2004 年で男性 78.6 歳、女性 85.6 歳)になったのですから、誰もが自分の人生に認知症を患う可能性を考えておくべき時代なのです。今のところ認知症に対する対策は、早期発見・早期治療で症状の進行を遅らせること( 2 次予防)と、適切な治療とケアで症状を緩和すること( 3 次予防)です。ただし、アルツハイマー病そのものは予防できなくても、アルツハイマー病に脳血管障害を合併したり、糖尿病を合併すると認知症が速く悪化することがわかっています。ですから、適度な運動や食生活の改善などで、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を予防することは、認知症の発症を遅らせるためにある程度有効だと考えられます。(長濱先生より)

   
   
   
   


Q:認知症であっても将来の計画ができるでしょうか?

   
   


A:アルツハイマー病では、初期のうちは記憶力が低下しても判断力はほぼ正常に保たれています。ですから忘れることへのサポートがあれば、例えば仕事の引継ぎとか、財産の処分など、将来についての判断も病前と変わらず判断できると思います。
しかし、ある程度認知症が進行してくると、判断力も低下してきますので、一定の時期からは将来のことを正しく判断することは困難になってきます。そうなると、患者さんに代わって判断する人を法的に決める制度(成年後見制度)を利用することも必要な場合があります。
一方、前頭側頭葉変性症では病気の初期から社会的判断力が低下することが多いため、認知症としては軽度であっても将来の計画を立てたり財産管理を判断することは困難と考えられます。
(長濱先生より)

   
   
   
HOME | サイトマップ | プライバシーポリシー

〒524−0103 滋賀県守山市立田町1231-4
TEL:077-585-4070 FAX:077-585-3472
 
 
特定非営利活動法人ゆうらいふ
明日はわが身〜これがasuwagaです〜 すごいぞ田舎暮らし 老いても悪くないじゃん!認知症のことを知ろう すごいぞ田舎暮らし あすわが日記帳〜認知症の方ご本人のブログ ご家族の想い 地域の見張り番 専門医からのアドバイス FAQ あすわがDVD 問い合わせ asuwaga.com