第20話
両親の最期の時まで!愛情一杯でかかわった一人娘T氏の想い
母 2021年12月(84歳)・父 2022年12月(87歳)永眠
T氏との出会いは『両親を呼び寄せた』と介護相談を受けた時でした。母はアルツハイマー認知症と診断されている。九州生まれで朝に晩に「家に帰らせてもらいます」と言い荷物をまとめて外に出ていく日々で、そんな母親を何度も九州に連れ帰っていますと。父親は言葉少なでしたが「そんな妻を見ているのが辛い、娘には苦労をかけている」と言っていました。
母親のサービスは週1回デイサービスでの入浴支援から始めましたが、認知症の進行と共に慢性腎不全が悪化し、透析治療が必要な状態と医師より説明を受けました。『透析治療を受けるべきか否か・・』母親の真意が確認出来ない為に、T氏は母親の日々変化する言動や病状に思い悩み何度も相談がありました。その度に思いを傾聴し訪問看護師等支援者皆で本人・介護者の想いを共有し考えました。食事量が減り、しんどそうで病院を受診した時点滴治療を受ける事ができませんでした。その時T氏は「母もしんどい、苦しいのは嫌だと思う。透析治療はせず、出来るだけ家で看てあげたい」と覚悟を決め、医師に思いを伝えました。その後小規模多機能サービスで泊まりや通いを利用し、いつでも医師の往診や訪問看護師の緊急対応ができる体制を整え、最期は苦しむことなく穏やかに逝かれました。
母親の看取り後、父親も糖尿病の治療中で透析の説明を受けました。胆のう炎併発で入院した際、腎機能の悪化で緊急透析を受けましたが、医師に「透析はしない。家がええ。最期はなんもせんでええ。」と自身の思いをはっきり伝えました。度々転倒し「死にたい」と漏らす為心配したT氏は、母親同様小規模多機能サービスが良いと利用を決断されました。最初は拒否的でしたが「ここはええとこや。皆ようしてくれる」と前向きになってきた矢先、好物のすき焼きの肉が喉に詰まり帰らぬ人となりました。T氏からは「父が選んだ最期、100点満点や」と。明るく父親に贈る言葉に、T氏の父親への愛情を感じました。
透析治療は延命治療の一つです。医師は命を繋ぐため透析治療を説得しましたが、T氏は認知症で意思表示出来ない母親の思いを汲み取ろうとする父親の姿に共感し、在宅で安らかに!との母の思いを尊重して、透析治療を受けないと決断されました。ご両親への深い愛情を感じました。
両親共に透析を受けるか否かで日々悩み続けたからこそ、ご両親の最期を悔やむことなく100点満点の介護ができた!と言えるのだと実感しています。ご夫婦の最期、それを支えたT氏からの学びは『本人・家族の想いに沿った相談支援(ケアマネ業務)』であり、今後の相談支援業務遂行の礎となるでしょう。【深田CM記】