ゆうらいふエッセイ

我在所で一日一日を生き・生ききり・多くの人の信頼を得ての一生!

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我在所で一日一日を生き・生ききり・多くの人の信頼を得ての一生!

2023年5月永眠

 S氏(88歳)は篤農家の長男として9人姉弟の7番目として生を受け、農家の戸主としての勤めを果たしながらも養鶏業・金属加工業を起こし、様々な研究開発に勤しんでいらした。又趣味も多彩でギターを弾き、田端義男の歌謡曲を親戚の集まりの場で披露し楽しんでいらした。地域の行事(自治会・神社・お寺など)には、下支えの役割で参画して、目立たぬように尽くしてくださっていた。
 親族の行事やお呼ばれごとがあると、偉い姉様家族が多数集まりご夫婦でてんやわんやの接待をしてくださっていた。親族が集まり従妹会をすると、150人の参加が得られ、皆さん楽しく歓談を交わし合う関係ができていた。父親も世間に名の知られた方で、東京や近江神宮に出かけていらして、夫婦ともども世間への気苦労も多かっただろうと推測します。
 71歳を迎えてからは、ご夫婦で田畑の仕事に勤しみあちこちの親戚へ配り、幸せを分け合ってくださっていた。86歳を過ぎた頃から物忘れが出てきたが、夫婦で育てた野菜を近くの親戚に配って下さり幸を配ってくださっていた。5月玉ねぎの収穫期となり、夫婦と娘さん3人で家の近くの畑で収穫した箱を自転車の荷台に乗せて家まで運び、納屋で自転車を止めて荷台から降ろした所で玉ねぎの箱の横に倒れてしまい、すぐに救急車を呼び総合病院へ受診された。心不全とのことでした。突然のことでご家族・親族ともあっけに取られたような表情で見守っていました。『おっさんらしい…良い往生や』と声を掛けられ、傍で玉ねぎを収穫していた妻・娘さんも泣きながら頷いていた。

家族・親族・地域の為に自身が”役立つ事は?”と常に心を配りながらも『お人におもねることなく本人らしく生ききった』姿に敬服します。

● 長女より:どんな些細な事でも、より良い結果になるよう考え工夫し、人の為に働くことを惜しまないで生活する事を背中で教えてくれた。いろんなことがあったが、両親の子供に産まれ生きていることが幸せです。
●長男より:明るく前向きな父でした。最期の時までその場を和ませてくれました。父に教えられて印象に残り実践している言葉は『困った時は損得で判断せず、善悪で判断すると良い』です。
● 次男より:私が学生の頃、父が癌の大手術をしたその時、「まだ死ぬわけにいかんのや」と主治医に告げていたと。今も父の愛で見守られている事を実感している。

ケアマネジャーとして人生最期の時までの相談をしていますが、一番大きな学びは、本人最期の時残されたご家族が「寂しいけどこれで良かった」と思い、これからのそれぞれの人生に繋がっていくことです。