第25話
アルツハイマー型認知症を患い不穏な気持ちを、夫の愛情を支えに目一杯生ききり・旅立ったA氏の日々
平成30年・78歳で永眠
A氏とは、平成25年小規模多機能サービス『花梨』に登録された時からです。平成30年に自宅でお亡くなりになるまでの5年間担当させて頂いた。出会った時には認知症の病状が進んでおり(要介護2)、週3回の通い時も徘徊や暴言・暴力などの周辺症状があり、泊まりの時は不穏症状が強く職員も介護が大変でした。そんな時は録音しておいた夫の声を聞いて頂くと落ち着き、安心されるのには職員皆で驚いたものです。以前から夫婦で地域行事に積極的に参加されていたため、その後も地域の仲間はA氏をあたたかく受け入れ、サロンや旅行にも参加されていました。落ち着いて通いや泊まりを利用できる様になってからは、面白いことを言っては人を笑わせ、歌を歌うのが大好きで、職員も楽しませて頂きながらの介護でした。
1年1年病状は悪化し、4年後に寝たきり状態となりました。ひとり娘さんは関東在住の為、日々訪問看護や小規模の職員のサポートを受けながら、家では夫がひとりで介護する時間もありました。夫は腎不全で週3回の透析を受けることになりながらも、A氏の介護を献身的にしておられました。夫は「両親を家で介護して看てもらったので、今度は自分が最期まで世話をする」と・・・。
症状が進み誤嚥性肺炎で緊急入院となり退院してきてからも、夫は必死で食べさせようとされます。もう命の最終段階にあり「無理に食べさせない方が良い」との医師の助言も聞き入れてもらえず、何度夫とA氏の最善の介護について話し合ったかわかりません。夫はA氏とのスキンシップを常に大事にしていました。徐々に二人の時間を大切に❣無理に食べさせない方が穏やかに過ごせると理解され、最後の8日間は旅立ちの写真や服を娘さんと夫が一緒に選び、静かに過ごされました。3人の孫も揃い、賑やかに夕食を食べている中で、A氏は苦しむこともなく静かに息を引き取られました。安らかな表情をされていました。
後日『花梨』の茶話会で夫に当時の心境を語って頂きました。
「何としてでも元気にしてやりたいとの思いが先走り、忠告を素直に聞き入れる事ができなかった。最後の8日間はいよいよ別れの時と覚悟を決めた。看取った後、不思議と悲しみの涙は出なかった」との言葉に、職員一同ホッとしました。
A氏ご夫婦の愛情の深さを知り、涙があふれてきました。色々な思いで介護されていたんだと強く共感し胸が熱くなりました。この学びを今は、自身のケアマネジメントの根幹としています。多くの学びを与えてくださったA氏ご夫婦・ご家族に深く感謝しています。 深田ケアマネ記