ゆうらいふエッセイ

家族に大切にされたH氏、躊躇なく夫の想いを支えた妻に満面の笑みを残して

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家族に大切にされたH氏、躊躇なく夫の想いを支えた妻に満面の笑みを残して

享年 73歳

Hさんとの出会いは2024年6月。大腸がんのステージⅣで、大腸の閉塞リスクを防ぐためにステントを留置していた。抗がん剤治療を受けていたが薬剤による間質性肺炎により治療を中止し、本人の強い希望で退院して来たと聞いた。初回訪問時「退院して自宅に戻ってきたことは嬉しいが、抗がん剤は続けられるのか?ステントを抜くタイミングはいつなのか?自宅でどの様に暮らせるのか?」と、不安で一杯の様子であった。まず自宅で安心して暮らせるように電動ベッド等の福祉用具をレンタルし環境を整える事を提案した。次に他県の病院に通院していた為、今後の事を考え在宅医の選択を提案し、医師は病状管理や訪問看護師との連携がタイムリーにできいつでも相談できる事を話し合い、在宅で安心して療養ができる事を提案した。結果、在宅サービス利用で体調も良くなり見違えるほど元気に見えた。
 「県内にいる息子さん家族と関東にいる娘さん家族と一緒に奈良に旅行し、すごく楽しかった」と、満面の笑みで話してくれた。訪問リハビリを入れ、今後の過ごし方について話し合おうと提案していた矢先、お腹の張りがあり緊急入院となった。このままだと腸閉塞の再発リスクがあると説明され、相談・納得の上人工肛門を作る手術を受けた。人工肛門の便破棄等の注意点を妻と一緒に指導を受け、退院前カンファレンスが開催された。「両足の浮腫みがあり歩きにくい・足が重い・微熱が続いているが何の熱か?」とH氏は質問したが、病棟看護師からは腫瘍熱との返事であった。退院後一時的に利尿剤で浮腫みは軽減したが、トイレまで歩くのも難しい状態に…子供達が2週間後家族で淡路島に遊びに行く計画を立てていたが、状態が日毎に悪化していき、食べられなくなり、トイレに行こうとした一瞬の隙に転倒し、その翌日お亡くなりなった。
 後日グリーフケアにお伺いした際、妻より「Hさんの写真と一緒にみんなで淡路島に行ってきました。夜はこの家でみんなで過ごしました。Hさんも喜んでいると思います」と。「亡くなる数時間前には目を開けてくれて一緒に写真を撮ったの」と言い、「笑っているでしょ!」と妻。笑顔のH氏に寄り添う息子さんや妻が写っていた。「最期にお別れをしてくれたのね。」と、嬉しそうに話してくれた。
遺影の写真は満面の笑み、妻はこの写真が良かったと涙を一杯溜めながらも笑顔で話してくれた。仲の良い夫婦であり家族愛溢れたHさん❣「すべて夫が決めてきた。何も後悔はしていない」と毅然と話された。
二人の馴れ初めをお聴きした。愛する奥様のことをいつまでもその笑顔で見守ってあげてくださいね。遺影の満面の笑顔を見ると、H氏の生きし日の笑顔が思い出されます。
深田ケアマネ記